栗の品種と選び方|利平・筑波・銀寄の違い、丹波栗が品種名ではない話
栗を買ってきて、その日のうちに茹でていませんか?
実はそれ、いちばんもったいない食べ方かもしれません。栗は0℃近くの低温で寝かせると、デンプンが糖に変わって甘みがぐっと増す果物です。産地が「熟成栗」として売っているのは、まさにこの処理を済ませた栗のこと。
この記事では、栗の主要品種の違いと、「丹波栗」という名前の本当の意味、そして家庭のチルド室でできる「甘くする保存法」までまとめて解説します。
栗の品種一覧(収穫の早い順)
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| 品種 | 収穫期 | 特徴 | 向き |
|---|---|---|---|
| 丹沢(たんざわ) | 9月上旬〜中旬 | 早生の代表。三角形の大粒で光沢は控えめ | 出はじめの栗ご飯 |
| ぽろたん | 9月中旬〜下旬 | 加熱すると渋皮がぽろっとむける | 焼き栗・時短調理 |
| 筑波(つくば) | 9月下旬〜10月上旬 | 日本でいちばん作られている。大粒で光沢あり | 万能・貯蔵向き |
| 銀寄(ぎんよせ) | 9月下旬〜10月上旬 | 横に広い扁平な大粒。丹波栗の顔 | 渋皮煮・甘露煮 |
| 利平(りへい) | 9月下旬〜10月中旬 | 「栗の王様」。粉質で甘みが強い | 茹で栗でそのまま |
利平|「栗の王様」と呼ばれる理由
利平は、1940年(昭和15年)、岐阜県山県郡大桑村(現・山県市)の土田健吉さんが、日本栗と中国栗を掛け合わせて生み出した品種です。名前は土田家の屋号「利平治」に由来します。
中国栗といえば天津甘栗に使われる、あの小粒で甘い栗。「日本栗の大きさ」と「中国栗の甘さ」のいいとこ取りを狙った交配で、実際にそのとおりの栗ができてしまった、という品種です。
見分け方はかんたんで、鬼皮(外側のかたい皮)の色がひときわ濃く、深煎りのコーヒー豆のような色をしています。粒はふっくら丸く、頭のてっぺんにうっすら産毛。果肉はホクホクの粉質で、甘みの強さは品種の中でも別格とされます。
まずは何も足さず、茹で栗か蒸し栗でそのまま食べてみてください。
筑波|日本でいちばん作られている栗
筑波は、国内でもっとも多く栽培されている品種です。名前のとおり茨城県のつくば地域にゆかりがあり、大粒で光沢があり、香りがよく、貯蔵性も高い。「王様」が利平なら、「主力選手」は筑波という関係です。
品種名なしで売られている栗にも、実は筑波が多く含まれています。「いつもの栗の味」の正体は、かなりの確率でこの品種です。
銀寄|飢饉の年に「銀札」を集めた栗
銀寄は五大品種の中で唯一、江戸時代生まれです。1753年(宝暦3年)、広島から摂津国歌垣村(現在の大阪府能勢町あたり)に持ち帰られた栗が始まりとされます。
名前の由来がふるっています。天明の大飢饉のころ、この栗を売り歩いたところ高値で飛ぶように売れ、銀札(当時の紙幣)をたくさん集めたことから「銀寄」。江戸時代の人の名付けセンスがそのまま残っている、数少ない品種名です。
粒は横に広い扁平な形で、風味が濃く、煮くずれしにくいので渋皮煮や甘露煮の定番。和菓子屋さんがこぞって使う栗でもあります。
ぽろたん|渋皮がぽろっとむける新世代
栗の最大の弱点は「皮むきが大変」なこと。鬼皮の内側の渋皮は、ぴったり果肉に張りついていて、包丁でむくのはひと苦労です。
ぽろたんは、この弱点を突破するために生まれた品種です。農研機構(国の農業研究機関)が育成し、2007年に品種登録されました。鬼皮に切り目を入れて加熱するだけで、渋皮が「ぽろっ」とむける。天津甘栗(中国栗)並みのむきやすさを日本栗で実現した、画期的な栗です。
電子レンジや魚焼きグリルで焼き栗にする食べ方と相性抜群で、「栗は好きだけど、むくのが嫌い」という人にこそ試してほしい品種です。
丹波栗・小布施栗は「品種名」ではない
ここで、栗のいちばん誤解されやすい話をします。
「丹波栗」という品種は存在しません。 丹波栗は、京都・兵庫・大阪にまたがる丹波地方一帯で採れた栗を指す地域ブランドです。室町〜江戸のころからの栗の名産地で、実際に栽培されている品種は銀寄や筑波など。つまり「丹波栗の銀寄」という言い方が正確です。
長野の小布施栗も同じ構造です。小布施町は江戸時代に将軍家へ栗を納めたと伝わる産地ですが、「小布施栗」という品種はなく、産地の名前です。
当サイトでおなじみのテーマですが、果物の名前には「品種名」と「ブランド名・産地名」の二層があります。巨峰の正式な品種名が「石原センテニアル」である話や、デコポンが商標で品種名は「不知火」である話と同じ構造が、栗にもあるわけです。
「丹波栗=高い品種」ではなく「丹波栗=名産地のお墨付き」。そう理解しておくと、売り場での値段の意味が読めるようになります。
実は、食べているのは果肉ではなく「種」
もうひとつ、栗の正体の話を。
農林水産省によると、栗の食べている部分は果肉ではなく「種」(種子の中の子葉)です。イガが皮、かたい鬼皮が果実の皮(果皮)に相当し、渋皮から内側がまるごと種。つまり私たちは、栗の種を茹でて食べていることになります。
当サイトでは以前、「無花果」と書くのに花を食べているいちじくの話を紹介しましたが、栗はその逆で「実を食べているつもりが種だった」。果物の「食べている部分」は、意外と見た目どおりではありません。
産地|茨城が40年連続で日本一
栗の生産量は、茨城県が40年連続で全国1位。令和6年産(速報値)では茨城が約3,780トンで、2位の熊本(約1,640トン)、3位の愛媛(約1,350トン)を大きく引き離し、全国のおよそ4分の1を占めます。
| 順位 | 県 | 収穫量(令和6年産・速報値) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 茨城 | 約3,780トン | 笠間市(岩間)・かすみがうら市・石岡市など |
| 2位 | 熊本 | 約1,640トン | 山鹿・球磨地区など |
| 3位 | 愛媛 | 約1,350トン | 中山栗の伊予市など |
おいしい栗の選び方
売り場で手に取ったら、次の4点をチェックしてください。
- 鬼皮に張りとツヤがある:古くなると光沢が消え、しなびてきます
- ずっしり重い:軽い栗は中の実が痩せているか、乾燥しています
- 穴が開いていない:小さな穴は虫食いのサイン
- 座(お尻のざらざらした部分)が白くきれい:黒ずみは鮮度落ちの目安
栗を甘くする保存法|チルド室で「熟成」させる
冒頭の話に戻ります。栗は収穫した時点では、甘みのもとがまだデンプンのままです。
ところが0℃前後の低温に置かれると、栗は凍らないよう身を守るためにデンプンを糖に変えはじめます。この性質を利用したのが低温熟成で、数日で甘みが目に見えて増し、じっくり寝かせると数倍になるとされています。産地やふるさと納税の返礼品で「熟成栗」「チルド熟成」と書かれているのは、この処理を産地側で済ませたものです。
家庭でのやり方はかんたんです。
- 表面の汚れを拭き、水気をしっかり取る(濡れたままはカビのもと)
- ポリ袋に入れ、口はゆるく閉じる(密封しない。栗は呼吸しています)
- 冷蔵庫のチルド室(0℃前後)へ。まずは3日〜1週間、余裕があれば2〜4週間
ふるさと納税での狙い方
栗は先行予約の文化が強い返礼品です。発送は9月中旬〜10月に集中し、収穫量に限りがあるため、8月ごろから予約受付が始まります。旬に入ってから探すと、人気の産地は売り切れていることも珍しくありません。
寄付額の相場
- 生栗1kg:9,000円〜13,000円前後
- 生栗2kg:13,000円〜17,000円前後
- 大粒(3L・4L)指定や「チルド熟成」もの、むき栗はやや高めの傾向
取り扱い自治体の例
- 京都府京丹波町:丹波くり。チルド熟成済みの大粒など
- 長野県小布施町:小布施栗。無燻蒸・低温熟成もの
- 茨城県石岡市・笠間市:日本一の産地・茨城の生栗、むき栗
- 千葉県船橋市:利平など品種指定の栗
まとめ|品種と保存で、栗はもっとおいしくなる
- 利平=栗の王様。甘さ重視ならまずこれ
- 筑波=いちばん作られている主力。迷ったらこれ
- 銀寄=江戸生まれ。渋皮煮にするならこれ
- ぽろたん=渋皮がぽろっとむける。手軽さならこれ
- 丹波栗・小布施栗は品種名ではなく産地ブランド
- 食べている部分は果肉ではなく種
- 買ったらチルド室で寝かせて甘みを引き出す
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